40cmの太さになるまで30年以上。
昔は野菜のように、畑で桐を育てていました。
昔の三島町には、各家で桐の木を育てる風習がありました。どこの家にも1本や2本はあったはずで、うちの父親も育てていましたね。
桐って、育つ地域によって材質が変わるんです。三島町の桐は日本一だと言われていて、昔のたんす職人の間では、三島の桐を使うのがひとつのステータスだったそうです。桐は柔らかさがひとつの特徴なんですが、ここの桐は木質が締まってしっかりした堅さがある。だから、カンナで仕上げた後の光沢が他の桐と全然違いますね。
100分の1ミリ単位で調整。
桐たんすを作るには精密な技術が必要です。
桐たんすの引き出しを仕込む時には、ライトを当てて、僅かな隙間から漏れる光が均一になるように少しずつカンナをかけるんですよ。だから引き出しの隙間には紙1枚も入らない。すごく精密なんです。
津波の被害にあったお客さまがいたんですが、たんすに泥水が入らなかったので、中の着物が汚れなかったそうです。そのたんすもきちんと修理して、またお客さまのもとに帰りました。
そういった桐たんす職人の技術を継承しつつ、新しい製品を作っていきたいと思っているんです。
日々、試行錯誤の繰り返し。
アイデアを考えるのって面白いんですよ。
桐の特徴である調湿性や軽さを活かしながら、日々、新しい製品のアイデアを考えています。「高級な桐で作るなんてもったいない」って最初は笑われましたけどね。
桐は意外と水を吸わないんですね。だからまな板にすると乾きが早いんですよ。そして軽いから扱いやすい。筆箪笥は、桐たんすの引き出しのように、隙間なくかっちりと閉まります。どの製品も一度手に取っていただければ、桐特有の触感のやさしさが感じられると思いますよ。